アーカイブ

最近のコメント

    タグ


    22年04月17日 2:09 pm |

    三人乗り電動アシスト自転車 再考すべきです(以下 記事のコピー)

    東大阪市内の国道で11日朝、母子3人乗りの電動自転車が転倒し、路上に投げ出された3歳の男児がトラックにはねられて亡くなった。3人乗り自転車は幼い子供を抱える子育て家庭の移動手段として人気が高いが、各地で事故やトラブルが後を絶たない。事故現場で取材を進めると、「親子乗り」に潜む危険や利用者の葛藤が見えてきた。

    奈良県境の山間部に近い住宅街。事故は11日午前8時55分ごろ、東大阪市善根寺町2の国道170号で起きた。国道といっても片側1車線で、幅は約2・5メートルと狭く歩道はない。

    亡くなった川上朝輝(あさひ)ちゃんは事故直前、母親(37)が運転する自転車前方のチャイルドシートに座っていた。後部座席には5歳の兄もいた。関係者によると、母親は兄を幼稚園に送り届ける途中だった。自転車は路肩を走行中に転倒し、座席にとどまるような状態で投げ出された朝輝ちゃんは接近したトラックにはねられた。

    トラックを運転していた男性(22)は大阪府警の調べに、「左にハンドルを切ったら『危ない』という声が聞こえ、助手席の横くらいに自転車が見えた。直後にガシャンと音がした」と供述しているという。府警は男性から当時の状況を任意で聴くとともに、朝輝ちゃんのシートベルト着用の有無も調べている。

    狭い路肩、路面に凹凸も

    事故はどんな場所で起きたのか。3日後、同じ時間帯に現場を歩いた。

    国道170号は東大阪市を南北に貫く直線道路で、奈良や大阪市中心部に向かう幹線道路にもつながっているため絶え間なく車が走り抜ける。狭い道幅を物語るようにセンターラインを越えて走るバスも見かけた。中小企業や工場がひしめく東大阪。そんな土地柄の影響か、6、7台に1台は大型トラックだった。

    周辺にはスーパーや病院、小学校、保育園もあり、自転車や歩行者も生活道として多く利用する。往来できる路肩もかなり狭く、トラックが通ればサイドミラーが体に触れそうな幅しかない。路面は至る所に傾斜や舗装による凹凸があり、自転車がバランスを崩す要因がそろっているようだった。

    「不安尽きないが便利で…」

    「前後に子供を乗せると重いので、どうしても自転車がぐらついてしまう」。近所に住むアルバイトの藤田輝子さん(51)はこう話す。藤田さんもかつて、幼い娘2人を電動自転車に乗せ、この道をよく通った。座席にはシートベルトも付いていたが、「娘が『苦しい』と嫌がり、着用できないまま運転することも多かった」と明かす。

    2人の幼稚園児を育てる女性(40)は、公園や幼稚園、病院などへの移動手段として毎日のように電動自転車を使う。「子供が急に泣きじゃくってバランスを崩し、ヒヤッとしたこともある。今回の事故で不安は尽きないが、利便性を考えると利用を控えることは難しい」と複雑な心境を漏らした。

    朝輝ちゃんが命を落とした現場にはたくさんのジュースやお菓子が供えられ、献花も絶えない。1歳の娘を抱っこして通りかかった30代の女性は「かわいそうな事故で胸が痛む。私も娘が成長すれば自転車に乗る生活が待っているので、事故を人ごとにせず『安全』について考えていきたい」と語った。

    総重量が100キロ超に

    街のあちこちで見かける「3人乗り自転車」は今や、子育てに追われる親世代の生活必需品になっている。幼い子供2人を乗せると自転車の総重量が100キロを超えることもあり、安全な運転にはさまざまな注意点がある。

    道路交通法は原則、2人以上で自転車に乗ることを禁止している。しかし2009年、子育て世代の強い要望を受け、強度など安全基準が確認された自転車に限って幼児2人を乗せる「3人乗り」が解禁された。電動自転車が特に人気で、販売台数も増加している。

    相次ぐ事故、目立つ転落・転倒

    便利な移動手段として重宝される一方、各地で事故が相次いでいる。川崎市では13年、母親の運転で歩道を走っていた3人乗り自転車が転倒し、後部座席から車道に投げ出された長女(当時5歳)がトラックにひかれて死亡した。

    消費者庁の消費者安全調査委員会は20年、各地の事故情報を分析した調査報告書を発表。10~18年に医療機関から情報提供され、1029人の幼児が負傷した事故は約5割が走行中に起き、最も多かったのが転倒や転落に伴うものだった。

    報告書は、買い物帰りで荷物を載せていた際やビル風にあおられた時などに転倒したとする事例も紹介。5センチの段差を乗り越えるだけでも操作の安定性を失う可能性にも触れている。

    「慣れた道こそ注意が必要」

    自転車の安全講習を開いている「自転車文化センター」(東京)で学芸員だった谷田貝(やたがい)一男さん(70)によると、電動自転車の場合、車体重量が30キロを超える製品もあり、子供2人と大人1人が乗ると100キロ以上になる。総重量が上がれば操作の不安定さは増すという。

    危険を防ぐにはどんなポイントを心がければいいのか。消費者庁はホームページ(https://www.caa.go.jp/)で、子供を同乗させる際の注意点をまとめている。段差の乗り越えは可能な限り避け、シートベルトやヘルメットを着用するよう呼び掛ける。前方に子供を乗せた状態で、後部座席の子供の乗降を控えることも挙げている。

    谷田貝さんはサドルを両足が地面につく高さに調整することも重要とした上で、「慣れた道こそ危険が潜んでいるという認識を常に持っていてほしい」と話した。【小山美砂】