電気自動車と並ぶ未来の乗り物として1970年万博で披露されたのが、三洋電機(現パナソニック)が開発したカドニカサイクル(電気自転車)だ。「サンヨー館」に30台出展し、当時社会課題となっていた騒音や排ガスなどの公害問題の解決につながると注目を集めた。
一般的な自転車の後輪部分にモーターと電池を組み合わせ、ペダルをこがずとも自走するよう設計した。8~12時間充電すれば、時速7.5キロメートルで約50キロメートル走行できる。
この自転車には同社の最新技術が多数搭載された。1つは世界初とされる電子式自動加速制御装置。なめらかに加速し快適に走れるよう、速度を制御する仕組みだ。電池は、繰り返し充電できる大容量カドニカ電池を採用した。既にテレビやテープレコーダーなどの家電で使われており、「家庭用コンセントから気軽に充電できることから、自転車と組み合わせるアイデアにつながった」(パナソニック)という。
三洋電機は将来、電気自転車が人々の生活の足や、都心の交通手段として需要が高まると想定。日本万国博覧会の公式記録資料集によると、会場での緊急連絡や取材に備え、報道関係者に10台提供したところ、抽選になるほど使用希望者が殺到したという。
カドニカサイクルは94年に市販されたが、ヘルメットや免許が必要だったことから普及しなかった。現物は万博記念公園(大阪府吹田市)内にある、70年万博の資料を集めた施設「EXPO’70パビリオン」で展示している。(新型コロナウイルスの感染拡大で20日まで臨時休館)。当時の技術やアイデアは三洋電機の電動アシスト自転車の開発に生かされた。
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